▼ひと昔前まで、分譲マンションは「若者が住むところ」というイメージが強かった。ところが、最近の調査では、マンション住民の高齢化が急速に進んでいることが分かった。今年6月公表された「マンション総合調査」によると、分譲マンションの世帯主の年齢は70歳以上が26%で、60歳以上も含めると54%にもなる。日本の世帯主の平均は、60歳以上が推計46%なので、分譲マンションの住民は日本全体の平均より高齢化している。
▼その理由は簡単だ。高齢者は一戸建てより断熱性が高く、戸締りが簡単で階段のないマンションを好む。また、賃貸マンションを借りようにも家主が嫌がり、入居が難しい。このため、古いマンションに住んでいる人はそのまま住み続け、築浅のマンションも高齢者が現金買いするケースが増えている。
▼住民の高齢化に伴い、マンションの管理にも影響が出てきた。管理組合の役員のなり手不足である。そこで、国では専門家による外部管理者方式(第三者管理方式)の導入を決めた。ところが現在、この制度をめぐって新たな問題が起きている。
▼「キツネに鶏小屋の番をさせるな」という西洋のことわざがある。マンションの管理会社が外部管理者になると、利益相反になるのは明らかだ。日常の管理だけでなく、改修工事にも影響する。今でも、工事のたびに施工会社から多額の手数料を徴収する管理会社が多い。加えて外部管理者になると、管理会社に事実上のフリーハンドを与え、工事の計画から業者の選定まで、意のままにできてしまう。
▼危機感を持ったマンション計画修繕施工協会と国交省は6月にガイドラインを作成、管理会社が外部管理者になる場合の規定を整備した。さらに10月には「外部管理者方式に関する予備認定基準有識者検討会」の報告書が公表された。「予備認定マンション」とは新築分譲マンションのうち、適正な管理計画等が確認されたマンションのことで、フラット35の金利引き下げが受けられるなどのメリットがある。
▼この報告書によると、令和5年度の予備認定件数は571件あり、うち121件が外部管理者方式を導入しているとみられ、前年度よりも件数と割合が増えている。問題はその中身だ。管理規約で管理者を固有の企業名にしているものが32%、管理業者を定めているものが10%ある。管理規約で管理者を決めてしまうと、変更には特別決議が必要になる。つまり、新築時の管理業者が外部管理者として居座り続けることになりかねない。
▼かつて悪質コンサル問題が注目されたが、結果として管理会社への依存が強まった。「ややこしい問題には関わりたくない。全部管理会社の責任で処理してほしい」というのが住民の心情だろう。悪質業者に利用されないための制度の整備と、この問題への意識喚起が必要だ。 (合田)