【だめひろい】CCUS普及への課題は何か

CCUS普及への課題は何か スキルに見合った賃金の確保を

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▼建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録数は11月末現在で2万8千事業所、技能者ID約15万人になった。初年度の目標(100万人)は到底達成できそうもないが、5年後にはすべての技能者の登録を完了しなければならない。5年以内に登録して、経歴証明を提出しないと、システム運用前の過去の経歴が蓄積されないからである。

▼大手ゼネコンの下で野丁場の仕事しかしない会社や技能者は特に問題ないだろう。しかし、小さな現場や、さまざまな作業が必要になる改修工事はどうするのか。カードリーダーがない現場や、作業員がカードを忘れた場合は、本人や事業者がシステムにログインして、作業内容・職種などの情報を直接入力することになる。これは結構な手間である。また、同じ現場で異なる作業をした場合(多能工)も、同様に事業者がいちいち就業内容を日単位で変更する必要がある。「応援」の場合もややこしい。適切な請負契約を結んだ上で、応援元の事業者を応援先の下請として登録しないといけない。何もしないと応援先に所属する技能者として扱われることになる。


▼本来は技能者、事業者の双方にメリットがあるシステムのはずだ。だが、普及がなかなか進まない理由は何か。そもそもキャリアが賃金に十分反映されないからではないか。CCUSのモデルになった英国のCSCS(建設技能認証制度)カードは、1995年から導入され、すでに英国の建設技能者の大半にあたる約200万人が持つまでに普及している。同カードは13等級にランク付けされ、業務に必要な資格・訓練の証明にもなる。このため、法的な規定はないものの、多くの建設会社、発注者はカードを持たない者の現場入場を制限している。

▼英国でスムーズに普及が進んだのは、同時に教育研修(資格)制度が整備されたことが大きい。英国では1986年に職業資格として5段階のレベルで評価する全国職業資格(NVQ)が導入され、次いで1997年には教育資格と技能の統一的な資格枠組み(NQF)が構築された。さらに、2009年には、NQFはQCFに発展的に移行し、より柔軟で細かい資格取得が可能になった。建設技能者の資格取得率はNVQ(06~ 12年累計)で37・5%、QCF(10~12年累計)で27・3%と、日本の建設業の技能検定資格の普及率(06~ 12年累計で5・1%)よりはるかに高い。(労働政策研究・研修機構『イギリスにおける能力評価指標の活用実態に関する調査』より)

▼本来、キャリアを蓄積するシステムと資格制度とは車輪の両輪のはずだ。さらにいうと、技能者がスキルに見合った適正な賃金を確保できる仕組みの整備が先のはずだ。新しいシステムだけ導入するのは「仏作って魂入れず」ではないか。本年度から外国人材の雇用に、新しい教育研修制度が導入された。日本の若者向けにこそ、こうした制度が必要ではないか。(合田)

日本塗装時報第2050号掲載記事

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