【だめひろい】完工高1兆円の回復へ DXで2024年問題の克服を

【だめひろい】完工高1兆円の回復へ DXで2024年問題の克服を

▼日塗装会員の完成工事額総額が1996年のピーク時に迫ってきた。1兆円の大台に乗るのは時間の問題だろう。日塗工の予測では今年度の建物向けの塗料は数量で4・1%の増加を見込む。順調にいけば、工事額で7~8%の伸びが期待できる。他の分野が2~3%増にとどまっても、全体の約半分を占める建築塗装がけん引して5%程度の伸びは達成できそうだ。さらに、そこそこの賃上げを実現するには、8~10%程度の成長がほしい。

▼ 直面する最大の壁は「2024年問題」だ。実労働時間を減らさず、残業時間を減らすためには様々な工夫が必要になる。一つは就業時間から休憩時間を細かく差し引き、就業規則に明記することだ。労働時間を1日6時間40分まで短縮できれば、週休1日でも残業はなくなる。もう一つは、現場までの往復に要する時間をうまく処理しないといけない。本来、通勤時間は就業時間に入らない。ところが、いちいち会社に出て打ち合わせしたり、現場作業が終わってから会社に戻って書類を作成していると、残業時間がどんどん増えてしまう。


▼建設業の働き方改革は現場への「直行直帰」を実現できるかが大きい。それには勤怠管理をデジタル化する必要がある。すべての職人のスマホに勤怠管理アプリを入れ、よりシビアな勤怠管理をしないといけない。勤怠管理アプリは建設業向けだけでも数多くのタイプが提供されている。直行直帰を実現するには、GPS機能が必須だ。GPSがついていると職人の動きがリアルタイムで把握できるというメリットもある。無料で試用できるアプリも多いので、自社に合ったものをじっくり検討したい。

▼2024年問題は物流業界でより深刻になる。経産省の試算では、トラックの輸送能力は今年で14%、2030年には34%不足するという。メーカー、販売店にとっても大変大きな問題だ。日塗商青年部では先月、酒卸業の共同配送を手掛ける運送会社・フィットから講師を招いてセミナーを行った(3面)。講師の説明によると、2024年問題への対応は、一にも二にもドライバーの確保にかかっている。

▼コロナ禍の前後で求人環境が大きく変わった。同社では320人いたドライバーが半減した。その後、様々な努力で211人まで戻すことができた。まず、求人サイトからリンクするホームページの一部を求職者向けに変えた。知らない会社、業界への求職者の不安を減らすため、仕事の内容を紹介する動画や、働いている人の話を載せた。更新もひんぱんに行い、会社の細かな動きを常に発信するようにした。求人広告に要する費用は、コロナ前は1人25万円ほどだったが、今は50万円かかるという。モデル年収は既婚者で525万円と高い。これほどまでしないと人は来ない。どんな方法をとるにせよ、残業を減らして生産性を上げるには、DXの導入、ICTの活用が必須だ。(合田)

日本塗装時報第2092号(2024年4月18日日)掲載記事


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