【だめひろい】技能実習生はなぜ失踪するのか 外国人に選ばれる国になるには

【だめひろい】技能実習生はなぜ失踪するのか 外国人に選ばれる国になるには

▼建設業や製造業の人材確保のため、外国人労働者の在留資格「特定技能」の上限が大幅に拡大される見通しだ。2024年度からの5年間で、過去5年間の総合計34・5万人の2・4倍になる82万人にまで拡大し、国交省の所轄分は18・2万人になる。また、特定技能だけでなく、技能実習に代わる新制度「育成就労」の受け入れ人数も併せて増やしていく。


▼国内の人手不足を補うには外国人労働者に頼らざるを得ないが、一方で様々な問題が起きている。一番困るのは突然の「失踪」だろう。令和4年の技能実習生の失踪者数は9006人で過去2番目の多さになった。34万人余りの実習生のうち、2・6%が失踪した計算だ。受入分野別では建設業の発生率が6・7%と最多で、行方不明者全体の52%を占める。国別ではベトナム人が6016人と圧倒的に多い。

▼入管庁のアンケート調査によると、来日前に支払った費用の総額が一番多いのはベトナム人だ。ベトナム人の技能実習生は送出機関に平均65万円もの費用を支払って来日する。さらに2割近くのベトナム人実習生は、送出機関以外にも何らかの費用を支払っており、その平均は44万円にもなる。その結果、ベトナム人実習生は来日した時点で相当な借金を背負っている。


▼ 大きな借金があっても、ベトナム通貨( ドン)に対して円が高かった時だと日本の仕事は魅力的だった。ところが、円/ドンの為替レートは過去2年間で20%近く下落した。一方で韓国ウォンや台湾ドルに対しては大きな変化がない。三菱UFJリサーチ&コンサルティングのレポートによると、外国人労働者の平均月給は高い方から韓国、日本、台湾の順になった。2022年時点で低・中熟練外国人の平均月給は、日本の特定技能24・6万円、技能実習21・2万円に対して、韓国は27・1万円(主に製造業)、台湾は14・3万円(製造業)である。

▼日本以上に少子化が進む韓国は、2 0 0 4 年から特定技能制度に近い「雇用許可制」を導入した。ただし、転職には厳しい条件があり、特定技能ほど自由ではない。また、韓国でも失踪や不法就労が社会問題になり、ベトナムの北部4省からの人材受け入れを停止している。韓国で働くと給料が良いが、まず入国するのが難しい。▼台湾は製造業の人手不足が深刻で、賃金が急速に上がっている。昨年6月からは低熟練労働者の受け入れを拡大する新制度を導入し、建設業でも受け入れを開始した。台湾でも外国人の失踪・不法就労が問題になっていたが、新制度により失踪率が大幅に低下しているという。

▼外国人労働者にとって日本は、近隣諸国に比べても賃金面の魅力が弱くなってしまった。ただ、労働環境の面ではそう悪くないようだ。韓国は技能者の育成という発想が乏しく、トラブルが多発している。日本ならではのきめ細かなサポートがあれば、外国人に「選ばれる国」になるのではないか。(合田)


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