【だめひろい】
現場の感染防止対策は万全か 一番危ないのは「トイレ」
▼果たして「3度目の正直」で終わるのか。緊急事態宣言は、今月末まで延長された。塗装など建設業に直接の影響はないが、従来の感染予防対策ガイドラインを今一度確認しておくことが大事だ。とりわけ、現場での対応を徹底する必要がある。入場時の体温測定や、消毒液の設置、不特定の人が触れる個所の定期的な消毒、食事・休憩時の3密回避などに気をつけたい。
▼盲点になりやすいのが「トイレ」だ。井上正康大阪市立大学医学部名誉教授は、トイレが最も感染の危険があると指摘する。井上教授が主宰する健康科学研究所のホームページによると、新型コロナウイルスは糞便中に多く含まれる。ウイルスが人に感染する際、細胞側のタンパク質(受容体)を利用するが、新型コロナウイルスはACE2という受容体に結合する。この受容体が最も多いのが小腸だ。ウイルスはまず小腸で増殖し、そのあと血液に入って全身に回り、さまざまな症状を引き起こすという。
▼井上教授によると、新型コロナウイルスは急性胃腸炎を起こすノロウイルスと同じような性質を持つ。インフルエンザウイルスなど、エンベロープ(脂質性の膜)があるウイルスは、胃酸で感染力を失うが、新型コロナはエンベロープウイルスにもかかわらず、小腸に達して下痢などの症状を起こす。どうやら今までの医学の常識が通用しないタイプらしい。昨年、集団感染が起きたダイヤモンド・プリンセス号でも、トイレの床で最も多くのウイルスが検出された。
▼中国では昨年2月の段階で患者の糞便からウイルスの分離に成功し、PCR検査はのど、鼻、肛門で実施している。肛門のPCR検査は他の検査より早く陽性反応が出ることがあり、陽性の期間も長い。ただ、入国する外国人に対しても行ったところ「嫌がらせか」と受け止められ、国際問題になりかけた。よく似たコロナウイルスであるSARSでは、マンションの下水管を伝い、下の階の部屋で感染が広がったケースもあった。
▼新型コロナウイルスについては分からないことが多いが、すべての感染の可能性に対して対策を行う必要がある。他の対策を徹底していても、トイレが不潔だと危ない。便座を上げた時などに内側についたウイルスが手に付着し、そのままドアの内側のドアノブに触れると、感染力が2週間程度保持される。その間に誰かがトイレを使用すれば、感染が広がってしまう。
▼井上教授が推奨するトイレの感染予防対策は簡単だ。使用前に便座を消毒液のついたティッシュで拭き、出る際は同様にドアノブを拭いて、外のくずかごに捨てるだけである。こうした手順を書いた紙をトイレの内側に貼っておけばよい。掃除の際は2重のマスクとゴーグルをし、飛沫がかからないようにするべきだ。簡単な対策で感染リスクを減らせるなら、実行するのに越したことはない。
(合田)
日本塗装時報第2051号掲載記事