
▼大阪・関西万博の開幕まであと1か月を切った。今回の万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」を共通テーマに、さまざまな先端技術が紹介される。開催国の日本館は、パビリオン自体がバイオガスプラントになっており、会場内で出たごみを微生物で分解し、バイオガスとして再生する。1970年の大阪万博では「月の石」が話題になったが、今回の日本館では南極観測隊が発見した「火星の石」が注目される。1千万年以上前に火星を飛び出した世界最大級の火星隕石は、生命の起源を解明する上で貴重なサンプルとされ、同時に展示される「小惑星の砂」とともに、パビリオンの目玉となる。
▼万博のシンボルになる大屋根リングは、日本の神社仏閣などの建築に使用されてきた伝統的な貫(ぬき)工法を採用した。金物を使わず、柱をくり抜いた開口部に梁を差し込む工法で、強度と柔軟性が高く、地震の際にも倒壊を防ぐ効果が高い。施工は北東工区が大林組・大鉄工業・TSUCHIYA、南東工区が清水・東急・村本・青木あすなろ、西工区が竹中工務店・南海辰村建設・竹中土木の各JVが担当した。木材ユニットを円形につなぎ、幅約30m、高さ約20m、内径約615m、全周約2kmという巨大なスケールは、世界最大の木造建築物として3月4日、ギネス世界記録に認定された。日本の高い建築技術を世界に示したといえる。
▼大阪府塗装工業協同組合が寄付し、建設に協力した「大阪ヘルスケアパビリオン」では、REBORN(リボーン)をテーマに、未来に実現を目指すヘルスケアや、iPS細胞による再生医療を紹介する。パビリオン内に設置される「リボーンチャレンジ」では、新技術開発に取り組む大阪の中小企業・スタートアップが、毎週入れ替わるかたちで出展する。7月15日から21日までは、大阪府中小企業団体中央会の加入団体より「パワースポットIN OSAKA中小カンパニー」と題して、13社が参加。塗装業界からは、大阪塗装協同組合の江藤聡理事長が経営するACE(大阪市鶴見区)が出展する。
▼「未来社会のショーケース」として、近未来の実用化が期待されるテクノロジーも多数披露される。水素燃料電池船は国内で初めて旅客運行され、自動運転バスは「レベル4」で会場外周を運行する。「空飛ぶクルマ」も4社が開発中の機体がデモ飛行する。パビリオン以外のイベントも盛りだくさんだ。4月13日のオープニングには、ユーチューブで40億回の再生回数がある世界的なアーティスト、Ado(アド)がEXPOアリーナでライブを行う。
▼そもそも万博は、子供たちに未来のテクノロジーを紹介し、夢を与えることに大きな意義がある。建設費の高騰が問題視されるが、上海博は6千億円、ドバイ博は8千億円もかかっている。2千億円そこそこで、未来を担う子供たちに、一生の宝物となる夢を与えられるなら、安いものではないか。(合田)