女性ネットワークの会 特別講演会 服部氏の講演要旨
日本建築仕上学会・女性ネットワークの会
現場の環境整備と男性も育休取得を
(※新聞掲載時の内容と一部異なります)
建設業界で女性の定着が問題視されているが、男性の定着も悪くなっている。収入が高いことは職業としての魅力となる。大手ゼネコンが潤えば下請けも潤うはずだったが、実際にはそうではない。下請け企業は社員一丸となって原価管理を学んでほしい。利益が得られるだけでなく、若手や女性にとっても「経営に参加している」というやりがいにつながるだろう。
現場の環境整備について、女性トイレは整ってきたが男性トイレは不潔なところもまだある。相対的に使う人の数が多過ぎるのも一要因だ。下請けは元請けに対して整備の必要性を訴えるべきだ。現場のトイレには和式が多いが、今の若い男性は普段、周囲を汚さないようにと親から言われ、洋式便器に座って用を足す。和式便器に慣れていない人もいる。昭和時代の男性は若い世代の人たちのナイーブな面への理解が足りない。
女性も権限のあるポジションを目指してほしい。原資の配分を決めるのも、環境を整備するのも、権限がなければできない。「女性が居る組織には不正が少ない」と言われている。トップの考え方が良くない時に止められる存在が必要。日本人は議論が下手。今後、女性が役員に就くことが増えると思うが、決して「お飾り」にならないように。自分の意見をはっきりと発信し、得た権力を理想の実現のために使ってほしい。
現在、私は非常勤の国家公務員としても務めている。その部署では男女共同や育児休暇が進んでおり、男性でも3カ月育休を取っている。半強制的な取得という側面はまだあるが、「勉強になった」と言っている。公務員が率先して行えば民間にも浸透するだろう。
働く女性の定着を阻むものにセクハラがある。性的搾取の対象として女性を見る男性が居るのは確か。女性もセクハラをかわす努力をしてほしい。状況によってはトラブルに巻き込まれる可能性もある。たとえ自分の容姿に自信がなくても女性である以上、自分には魅力があることを自覚しておくこと。
今や多様性は男女の問題だけでなくなっている。今後、LGBT(性的マイノリティ)への配慮は必須となり、トイレ・更衣室事情はますます複雑になるだろう。すべてのマイノリティを認めないとダイバーシティが完成しない。これまでマイノリティだからと建設業からはじき出されていた女性が、さらなるマイノリティを追放することがあってはならない。
日本塗装時報第2061号掲載記事