厚労省 皮膚障害等防止用保護具 選定マニュアルを公表

厚労省 皮膚障害等防止用保護具 選定マニュアルを公表

厚生労働省

 厚生労働省はこのほど、「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(第1版)」を公表した。今年4月1日から、皮膚に障害をもたらす化学物質の製造・取り扱い時に「不浸透性の保護具の使用」が義務化される。皮膚等障害化学物質には、「皮膚刺激性有害物質」(744物質)および「皮膚吸収性有害物質」(196物質)があり、保護具着用管理責任者が適正な保護具を選択して労働者に使用させないといけない。今回のマニュアルでは保護具に関する基礎知識から保護具の種類、性能、選定方法などをまとめた。

 近年、労働災害事例のうち、経皮ばく露による皮膚障害が最も多くなっている。特に皮膚吸収性有害物質は、皮膚刺激性はなくても皮膚から吸収され、発がんに至った事例も発生している。不浸透性の保護具としては、保護衣、保護手袋、履物、保護眼鏡などがあり、マニュアルでは保護手袋のうち化学防護手袋の選定方法などを示している。


 化学防護手袋の選定フの耐透過性データを確認し、候補を選定(耐透過性能一覧表で取扱物質を確認、手順1で確認した作業内容・時間を参考に作業分類を確認。作業パターンに適した耐透過性レベルの材料候補を選定)▽手順3手袋製品の性能確認=化学防護手袋の説明書等で製品の具体的な性能を確認(材料名、化学防護手袋をキーワードにインターネットで検索する等して参考情報を確認。説明書等で規格、材料、耐浸透性能、耐透過性能等に適しているかを確認)▽手順4保護具メーカーへの問い合わせ(オプション)=保護具メーカーへ必要な製品の情報を確認。

【皮膚等障害発生の現状】 わが国における化学物質による健康障害事案( 休業4 日以上) は年間400件程度で推移している。この健康障害事案の中では、経皮ばく露による皮膚障害が最も多く、吸入・経口ばく露による障害発生件数の約4倍となっている。また、最近では、オルトートルイジンやジクロロ4ジアミノジフェニルメタン(MOCA)など、皮膚刺激性はない物質が皮膚から吸収され発がん(膀胱がん)に至ったと疑われる事案も発生している。皮膚刺激性等がなく、皮膚に吸収される物質は、急性毒性作用がない限り、作業者がばく露に気づきにくく、ばく露が常態化してしまうおそれがある。そのような物質が、発がん性等の遅発性毒性を有していると、後々重大な健康障害につながる可能性がある。


【塗装工場の労災事例】 塗装工場で廃塗料沈殿槽を清掃時に水酸化ナトリウムによる皮膚障害が発生している。 災害の発生した工場内の塗装を行うブースには、オーバースプレーされた塗料を受けるための沈殿槽が設置されており、槽内には常時深さ50㎝程度に水が張られ、けん化反応により塗料を沈殿させるために、水酸化ナトリウムと廃油が投入されていた。災害発生当日は、半年に1度の塗装ブース全体の清掃の日であった。槽内の水溶液がバキュームカーにより吸い上げられた後、作業者A、Bほか計4人で槽底に残った廃塗料沈殿物(深さ約30㎝)をスコップですくってバケツに入れる作業を行っていた。

 作業開始から約1時間後、スコップですくった際に飛んだ水溶液を浴びたAが、顔、手、足に痛みを訴えたため、現場責任者はAの作業を槽外での作業に変更した。代わりにCが槽内での作業に就いた。その後、B、Cも足などの痛みを訴えたが、沈殿物の除去が終わるまで作業を継続した。作業終了後、3人が医師の診察を受けたところ、水酸化ナトリウムによる薬傷と診断された。

 なお、作業者の服装は、通常の作業着にビニル手袋、ゴム長靴、さらに人によってはナイロン製ヤッケを着用していた。皮膚に障害を与える水酸化ナトリウムを取り扱うにもかかわらず、適切な保護具を使用していなかったこと、作業者及び現場責任者が、槽内の物質の有害性について認識していなかったことが原因と考えられている。

皮膚障害等防止用保護具の例

日本塗装時報第2091号(2024年3月18日号)掲載記事

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