▼塗料販売業界の国家資格である「塗料調色技能検定」の存続が危ぶまれている。技能検定職種の見直し、統廃合を進めている厚労省の「技能検定職種の統廃合等に関する検討会」では、統廃合の判断基準に「過去6年間の年間平均受検申請者数が100人以下」を示す。塗料調色技能検定は6年平均の受検申請者数が98人で、令和4年度の検討対象職種に挙がった。検討会の結論は「令和5年度以降に年間受検申請者数が100人以上であることを条件に、令和6年度に再検討」となった。5年度は85人にとどまり、制度存続に必要な人数に届かなかった。
▼受検者が少ないからといって、調色技能のニーズが減っているわけではない。コンピューター調色が当たり前になった今でも、現場ですぐ調色できる人の技能は貴重だ。調色検定の受検者にも、建築塗装関係者が多いと聞く。トップレベルの建築塗装技能士が技を競う、日塗装主催の全国建築塗装技能競技大会では、一貫して競技課題になっている。最新のコンピューター調色機を使う塗料メーカーでも、一部の濃色系はコンピューターより人の目の方が正確に合うようだ。
▼このように、業界にとって重要な技能であるにもかかわらず、検定の認知度は決して高くない。まず検定の内容がほとんど知られていない。塗料調色は単一等級で実技と学科試験があり、北海道から沖縄まで、全国18都道府県で毎年実施されている。実技試験は、色見本と同色になる2種類の塗り板を作成する「製作等作業試験」(2時間15分)と、塗料の種類や色の目視判定、色見本の原色混合量判定を行う「判断等試験」(15分)の2つの試験を実施する。学科試験(1時間40分)は50の問題(マルバツ25問、四択25問)に答える形式だ。受検者が少ない現状では出版社が扱うのは難しいだろうが、受検対策用のテキストもない。受検のための準備は、中央職業能力開発協会の「技能検定試験問題公開サイト」で過去問を参考にするぐらいしかできない。
▼今年1月の統廃合検討会では「受検者増に向けた業界団体の取組みとして、団体会員へのきめ細かい周知活動により潜在的需要の掘り起こしの強化、当該団体とは異なる業態ではあるが受験対象者が存在する他団体へ働きかけを行うとしている。第1次判断基準への不足が2名であること、潜在的受験者が相当数あることも踏まえ、これら取組みによる受験者増が期待される」とし、コロナ禍もあってなんとか継続が認められた。
▼このまま受検者が100人を割り込む状態が続くと毎年実施は難しく、隔年になるか、廃止されてしまう。日塗装をはじめ、塗装業界団体の協力が喫緊の課題だろう。さらには、「カラーコーディネーター」のように一般の人も関心が高い資格にできないものか。調色は難しいが、実際にやってみると大変面白い作業でもある。ただ、一般の人にアピールするなら、溶剤の匂いをかいで種類を判定するなどの実技課題の見直しが必要だ。 (合田)