日塗工 塗料産業フォーラム開く 新たな化学物質規制などテーマに

若月雄一郎会長

 日本塗料工業会主催、日本塗料商業組合・日本塗装工業会協賛による第33回塗料産業フォーラムは昨年12月13日、東京塗料会館会場およびWEB配信のハイブリッド形式で開催された。今回は厚生労働省労働基準局の猿渡敬氏が「労働安全衛生法に基づく新たな化学物質規制のポイント」、三井化学の柳井展明氏が「フィジカルインターネット実現会議―化学品WGの設立経緯と現在の活動」、トヨタ車体の川合智廣氏が「カーボンニュートラルの実現に向けて~競争力のあるコンパクト塗装ライン構築~」、TOPPANホールディングスの難波系治郎氏が「TOPPANホールディングスの安全活動」の各テーマで講演した。

 開会にあたり、若月雄一郎会長は「我が国塗料業界は、円安によるエネルギー価格、原材料価格の上昇など非常に厳しい環境下で努力を重ね、生産量は前年より若干の減少が見込まれるものの、販売価格の適正化が寄与し、販売金額は前年を上回ることが見込まれている。塗料はいつの時代も社会に役立ってきており、今後も必要とされる材料である。

 このような時こそ、塗料の存在意義や価値を改めて考え、整理することが必要である。本フォーラムは塗料産業が直面する課題や、最近の話題を会員にお知らせすることを目的に、毎年開催している。今回はいずれも注目の高い課題に向けた取り組みを紹介する。改めて塗料は彩りを与えるだけでなく、表面を保護したり、環境負荷を低減させたりと、社会ニーズ、課題に対して様々なソリューションを提供できる材料である。また、社会との調和を考えながら、技術の持続的な発展を予感させる。本フォーラムの内容が明日の塗料産業の発展につながるものとして活用していただくことを祈念している」とあいさつした。

     ◇

 猿渡氏の講演要旨は次の通り。

 化学物質による労働災害は、年間約500件発生しており、個別規制の対象外となっている化学物質による労働災害が全体の約8割を占めている。

 業種別では製造業が5割近いが、建設業や商業における労働災害も多い。

 労働安全衛生法に基づき、危険有害な化学物質を提供する者(メーカー、卸売業など)には▽危険有毒性情報のラベル表示▽SDSの交付▽危険性・有毒性等の調査(リスクアセスメント)▽必要なばく露低減措置(保護具の使用など)が義務付けられている。

 ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の追加については、危険性・有毒性がある全ての化学物質をラベル表示・SDS交付等の義務対象物質とすることになった。

 その対象になる物質は令和6年4月から約890物質、令和7年4月から約1500物質、令和8年4月から約2280物質が指定され、令和8年4月時点で約2320物質(国によるGHS分類ベースで約2900物質)が指定される。

 リスクアセスメント対象物による健康影響の確認のため、事業者は労働者の意見を聴き、必要な健康診断を実施しないといけない。その記録は5年間(がん原性物質に係る健康診断については30年間)保存しなければならない。

 化学物質の自律的な管理のための実施体制は、令和6年4月から化学物質管理者および保護具着用管理者の選任が義務化されている。

 今後の制度改善に向けた検討は継続して行われている。リスクアセスメントの的確な実施のためには、SDSの交付等により、化学物質の危険・有害性情報を入手することが前提であり、SDS等の通知事項の内容を充実し、化学物質の成分およびその含有量が営業上の秘密に当たる場合には、その旨をSDSに明記して記載を省略することが提言されている。

 また、専門家検討委員会では、特別則の規制の対象になっていない物質を起因とする労働災害への対策の強化を図ることになった。

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