【だめひろい】緊急事態宣言で現場はどうなる 感染防止対策に業界の英知を
▼「マスク奨励の結果、マスクの値段が非常に高くなった。これは一部奸商の暴利を貪(むさぼ)る所である」―百年前の大正9年1月、日本でスペイン・インフルエンザが猛威を振るった当時の神戸新聞の記事だ(速水融著『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』より)。需要に供給が追いつかなければ、価格だけが高騰していく。科学技術が飛躍的に発展した今日でも同じことが繰り返される……
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▼百年前、サンフランシスコなど米国のいくつかの都市ではマスク着用が義務化された。今回の新型コロナウイルス対策でも米疾病対策センター(CDC)は公の場でのマスク着用を呼びかけている。結局、打てる手段は百年前と同じだ。マスク着用による感染予防効果には疑問が持たれているが、無症状の感染者がウイルスを他人にうつすリスクは減らせる。確実に効果があるのは、3密(密閉、密集、密着)を避け、他人との社会的距離を保つことしかない。
▼7日に発令された緊急事態宣言を受けて、さまざまな業種で休業、営業の自粛が始まった。建設業界でも、同じ現場から3人の感染者が出た清水建設は、対象地域の工事を原則「閉所」として発注者と協議に入った。西松建設も同様な措置を先に発表している。一方、その他のゼネコン各社は発注者からの要請がない限り、工事を継続する考えのようだ。そうでなくても人手不足で工事が遅れている現状で、一時的にでも工事を中止した場合、再開後の作業員の確保がさらに難しくなる。民間の発注者のほとんどは工事の中断を望まないだろう。
▼大林組は、対象地域における工事は「原則として継続」「施工にあたっては、可能な限りテレワークを実施するとともに、作業員を含めた時差出勤や朝礼・休憩の分散などにより現場内の3密を避けるなど、感染防止を徹底する」との方針を決めた。長谷工は「作業員を含めた朝礼の中止、休憩時間の分散などにより作業所内の3つの密を避け、感染防止を徹底する」。前田建設は、3つの密を避けるほか「始業前の検温の実施、および感染が疑われる職員・作業員の帰宅を徹底する」としている。
▼このウイルスとの戦いはいつまで続くのか。スペイン・インフルエンザの場合、大正7年(1918年)の春に先駆けの流行があり、いったんは消えてしまった。ところが、その年の秋に変異して毒性を増した第2波が大流行し、さらに翌年に第3波が襲っている。今回の新型コロナウイルスは今後どのような経過をたどるか、専門家でも予想がつかない。ワクチンが実用化されるのは早くても1年先で、各種の治療薬も実用段階にはない。そうした中、関西ペイントが開発した、抗ウイルス機能をもつ「接触感染対策テープ」が大人気となり、同社では新たに「接触感染対策シート」を発売した(2面に記事)。塗料業界から、ウイルスに「反撃の狼煙」を上げたい。(合田)
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日本塗装時報第2036号掲載記事