だめひろい DXを妨げる「FAX文化」 ペーパーレス化の徹底を

▼ファクシミリの歴史は長い。1843年に英国で特許が取得され、電話が発明される11年前の1865年にはパリ・リヨン間で最初の商用サービスが始まった。その後、改良が重ねられ、1966年にはゼロックス社が電話回線に接続できる、現代のFAX(元は同社の商標名)の最初の機種を発売した。日本では通信の自由化が始まった1970年代から普及が進み、1990年代半ばまで右肩上がりで増え続けた。

▼ただ、新型コロナウイルスの流行が拡大した2020年には、FAXに依存している保健所や医療機関の間の連絡効率の悪さが問題になった。電子メールなら一瞬で届き、データの集計も簡単だ。それがFAXだと送受信に時間がかかり、集計するには再入力する手間がかかる。企業がDX化を進める上でもFAXは大きな壁になる。サプライチェーンのどこかにFAXがあると、そこで再入力が必要になり、入力ミスが起こる可能性もある。FAXにこだわる日本だけが世界の潮流に取り残され、ガラパゴス化してしまったのか。生産性の低さの一因になっているのではないか。

▼情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が昨年1月実施したアンケート調査によると、勤め先でFAXを使用している人は「日常的に使用」「たまに使用」を合わせて4割いる。これに対し、同時期にドイツで行った調査では5割と、日本より多い。IT先進国の米国の調査(23年2月)では、意外なことに7割もの人がFAXを使用している。

▼FAXの便利な点(使用する理由)は、日本が「簡単に送受信できる」「手書き原稿を送ることができる」を多く挙げるが、ドイツでは「FAXを使う取引先が多い」「簡単に使える」など、米国は「確実に届く」「印刷した受信文書をそのまま利用する」などが多い。受信原稿の利用方法にも違いがある。日本では「印刷して利用」が6割、「自動で文書サーバー・PCに転送してOCRを行う」が2割だが、ドイツ、米国では5割が後者を挙げている。

▼同じ機器を使っていても、使用する目的や使い方にお国柄が出るようだ。日本は「操作の簡単さ」「手書き原稿が送れる」が重要だが、ドイツは「取引先に合わせる」、米国は「確実性」を重視する。また、日本では受信した原稿をOCR(画像からテキストデータへの変換)するという意識が低い。そもそも元の原稿が手書きではOCRもあまり役に立たないだろう。

▼DX化の妨げになっている日本の「FAX文化」だが、いきなり廃止するのは無理としても、工夫次第でペーパーレス化は可能だ。先の調査では企業の大半は複合機を使っている。ほとんどの複合機はパソコンで内容を確認でき、紙に出力するだけではなく電子データ(PDF)として保存できる。文書サーバーなどに転送してOCRを行えば、よりデータの再利用がしやすい。まずは昨年から義務化された電帳法に従い、受信した書類の電子的な保存を徹底するべきだろう。 (合田)

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