
▼「顧客への連絡は電話が最多」「打ち合わせの記録は手書きが7割」―LINE WORKSが不動産・建設業界の営業職を対象に実施した調査によると、アナログな実態が明らかになった。営業活動で連絡や案内にかける時間は、1日あたり「2時間以上」が20%、「1時間以上〜2時間未満」が29%で、全体の平均は72分だった。会議や顧客との打ち合わせ内容の記録方法は「メモ帳やノートに手書きしている」が73%で最も多く、その整理や議事録作成に1日あたり平均1時間をかけている。
▼つまり、不動産・建設業界の営業職は、毎日、顧客との連絡や打ち合わせの整理、記録に2時間以上を費やしているようだ。連絡や案内に時間がかかるのは仕方ないとして、打ち合わせ内容を整理したり、会議の議事録を作成したりする時間はDX(デジタルトランスフォーメーション)で合理化できないものか。
▼大和総研の調査によると、建設業の1人あたりのソフトウェア装備率(金額)は製造業の約4分の1にとどまっている。DX化に踏み切るにはそれなりの投資が必要だ。そこで、国の助成金を活用するという方法がある。中小企業庁では2017年から「IT導入補助金」制度を創設し、ITツール(ソフトウェア、サービス)の導入を支援している。これは50万円以下のツール(会計、受発注、決済のうち1機能以上)を導入すると、中小企業は4分の3以内、小規模事業者は5分の4以内の導入費用が補助される制度だ。ツールと併せて購入するパソコンやその他の周辺機器も「インボイス枠」を利用すると2分の1(上限10万円)まで補助される。例えば20万円のノートパソコンを購入すると、実質10万円の負担ですむことになる。
▼2025年度は5次まで枠が設定され、4次締め切りは8月20日、5次締め切りは9月22日だ。本年度中にDX化、ITツールの導入を検討している中小企業はまだ間に合う。ただ、本年度の採択率は55%程度にとどまっている。近年は申請の不正が相次いだため、審査が厳しくなったようだ。このため、実績があり、信頼できる業者、ツールを選ぶ必要がある。
▼打ち合わせや会議の資料がデータ化されていれば、生成AIの活用も可能だ。ZOOMやマイクロソフトのTEAMSを利用すれば、生成AIで議事録を作ることもでき、入力の手間も省ける。営業部門まで含めてアナログの作業を改めて見直せば、DX化で生産性を向上する余地はいくらでもありそうだ。(合田)