
日本塗料工業会、日本塗料商業組合、日本塗装工業会の3団体で構成する塗料塗装普及委員会は11月26日午後、東京塗料会館会場とウェブ配信のハイブリッド形式による色彩セミナーを開催した。
◇
第一部では、日本流行色協会の武田里美氏が「時代を映し出すカラートレンド~モビリティカラーから読み解く時代の声~」と題して講演した。
武田氏は自動車のボディカラーの変遷をたどりながら、時代のムードや技術革新、社会の変化が色にどのように影響を与えてきたかを解説し、近年のカラーデザイン傾向と今後の注目色について述べた。
今後のカラートレンドとしては「自然界の色」「高彩度色」「光の色」などに注目している。
「自然界の色」はグリーン(彩度を抑えた穏やかなトーン)やブルー(淡いトーン)は、安らぎを与えてくれるため、今後も重要とした。
「高彩度色」は鮮やかな暖色系を挙げ、停滞ムードからの大きな動き、進出、仲間とのコミュニケーションといったイメージから、目が覚めるようなレッド、オレンジ、イエローなどの暖色系カラーに注目が集まると予測する。
「光の色」は、Z世代などでデジタルデバイスの色や光の色が当たり前の色彩感覚になっているため、光を発するような色や、角度によって色が変わる偏光(変光)する色も重要になるという。
技術面では、富士フイルムが開発した、光の干渉などを利用して色を出す構造色インクジェット技術のような新しい色彩表現技術も今後注目される。
◇
第二部では、日本色彩研究所の名取和幸理事長が「多様性を活かすカラーコミュニケーションの世界」と題し、色彩のユニバーサルデザインの重要性と、色の捉え方の新たな視点について述べた。
色の見え方は、生まれながらの遺伝や加齢によって人それぞれ異なる。そのため、多数派の見え方とは異なる場合、伝えたい情報がうまく伝わらず、情報を受け取る側に不便さや不安が生じることがある。この課題に対し、カラーユニバーサルデザインは、色の見え方の多様性を考慮し、「できるだけ多くの人に情報を届けよう」という目的で、2000年代頃から日本で積極的に推進されてきた。
当初の目的が「情報が一部の人に届かない問題を解決する」ことであったのに対し、近年は、人によって見え方が違うという事実を「うまく生かす」という新しい段階へと進化している。
講演では、色の持つ可能性と多様な捉え方を示す具体例として、目の見えない少年を主人公にした絵本を紹介した。この絵本では色を視覚情報としてではなく、他の感覚を通じて捉える豊かな世界を描いている。主人公は目を使わずに、味覚、嗅覚、触覚、聴覚といった多様な感覚を通して色を認識し、その色を理解している。多くの人が「色=見えるもの」として捉えがちだが、実際には人それぞれの身体的、感覚的な違いによって、色の世界は多角的に広がっている。
名取氏は、色の見え方の違いを単なる「課題」として捉えるだけでなく、多様な感覚を使って色を捉えることのできる豊かさとして認識し、それを最大限に生かしていくことが、今後のカラーコミュニケーションにおける重要な鍵となると結んだ。




















