だめひろい 国土強靭化に新たな視点を 安全保障にはインフラが重要

▼女性で初めて内閣総理大臣に選ばれた高市早苗氏は、かつて業界団体(旧日本塗料倶楽部)の講演会で講師を務めたことがある。講演会は米国で民主党が大統領選に勝ち、ビル・クリントン大統領が就任する直前の1992年11月に開かれた。当時、若手の政治評論家として活躍していた高市氏は、民主党議員のもとで働いた経験を踏まえ、米国の国内事情を説明した。

▼併せて語った、日本の参院選に出馬した時の経験談が面白かった。結果は自民党の公認が得られず落選したが、政策より地縁、人脈に重きを置く、内向きな日本政治の体質に、ほとほと手を焼いたようだ。ちなみに講演会の翌年には衆院選に無所属で出馬し、奈良県全県区のトップで初当選を果たした。

▼その高市総理が力を入れるのは「危機管理投資・成長投資」だ。とりわけ安全保障分野は重視し、防衛費の対GDP比2%を今年度中に前倒しで実現するという。

▼欧州では、ロシアのウクライナ侵攻やトランプ政権からの圧力により、国防費が大幅に増額されることになった。ドイツはGDPの3.5%を国防費に充てるほか、国防インフラにも1.5%を予算化する予定だ。

▼「国防インフラ」という考えは、日本でも「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラ整備」として一応配慮はされている。具体的には特定利用空港・港湾の整備やアクセス道路の整備などだ。ただし、「有事」は想定されていない。あくまで「平時」に、自衛隊や海上保安庁が「柔軟かつ迅速に施設を利用できる」という趣旨である。

▼もちろん「有事」など、ないに越したことはない。「言霊」の国、日本では「縁起でもないことは言うな」という圧力が強い。しかし、いくら正面装備ばかり立派でも、それを支えるインフラが脆弱では「有事」に役に立たないおそれがある。政治的にデリケートな問題には軽々しく触れるべきではないが、「平時」にあっても「有事」をタブー視せず、常に想定しておくことは必要だろう。

▼お隣の韓国や台湾では、何キロにもわたって真っすぐに伸びる、幅の広い高速道路が多い。これらの道路は中央分離帯が取り外し可能で、有事には滑走路に転用できる。ミサイルや爆弾の技術が高度化した今日では、飛行場の滑走路は第1撃で破壊される。そうした場合に代替できるインフラがないと、いくら高性能な軍用機を持っていても意味がない。何十トンもある飛行機が離着陸する場合、普通の道路ではもたない。韓国や台湾の高速道路は、特別に強化されたコンクリートでできている。つまり、道路の設計段階から「有事」を想定している。

▼「国防インフラ」は幅広い分野に及ぶ。道路・橋梁など防衛費以外で整備しておくべきものが多い。国土強靭化は自然災害以外の災害対策にも必要だろう。こうした新たな視点からのインフラ整備、予算化が必要ではないか。巨額の税金をつぎ込むのであれば、最も効率的な使い方が求められる。(合田)

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