▼改正建設業法が12月12日から全面施行された。若年層が建設業に入職し、中長期的な担い手を確保するためには、長時間労働の是正、週休2日の達成などの働き方改革、賃上げによる技能者の処遇改善が不可欠だ。今回の改正では、このうち技能者の適正な賃金を確保するため「労務費の基準」を核とした新たな取引ルールを整備する。原資となる労務費や適正利潤を含む請負代金を、発注者から技能者を雇用する建設業者までのサプライチェーンで、着実に確保することが目的である。
▼中央建設業審議会(中建審)は、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別に試算した年収の目安を「標準労務費」として明らかにした。公共工事設計労務単価が賃金として支払われた場合の年収額を「目標値」とし、これ以上の支払いを推奨する。また、最低限支払うべき下限の水準として「標準値」も同時に示し、これを下回るような見積もりや見積もり依頼、総価での原価割れ契約を禁止する。
▼公共・民間工事を問わず、個別の契約での適正な労務費の算出方法は<設計労務単価×歩掛×数量>となる。歩掛は「当該工事の施工条件・作業内容等に照らして、受注者として責任を持って施工できる水準を計算して設定する」とした。
▼1次下請の場合、この適正な労務費に雇用経費、自社利益、協力会社の下請利益を上乗せして、発注者・元請と請負契約を結ばなければならない。中建審が勧告する「労務費の基準」は<適正な労務費+雇用経費>を指す。この部分が価格交渉できない聖域になる。
▼実効性を確保するための施策としては、建設技能者を大切にする企業の「自主宣言制度」や、ダンピングの疑いのある契約を効果的に抽出し、著しく低い労務費見積りを行う業者を摘発する「建設Gメンによる調査」などが盛り込まれている。あわせて国交省では、「基準」の運用指針を公表した。受注者、注文者、発注者・元請間の見積り・契約における対応―の各ポジションに分け、Q&A形式で具体策をまとめた。
▼今回の改正により、ダンピングの排除はもちろん、従来の商慣習も根本的に変える必要がある。設計労務単価は毎年引き上げられ、2012年から25年までの13年間で9割も上昇した。一方で現場の技能者の賃金の伸びは鈍い。上がったはずの労務費はどこかで「蒸発」してしまったのか。今回の業法改正は技能の価値を改めて見直す契機になることが期待される。業界の将来を担う若者が、誇りをもって入職できる環境を整備しないといけない。(合田)





















