だめひろい 熱中症防止に根本的対策が必要 「夏季休工」や「サマータイム」の導入を

▼10月も半ばが過ぎたが、全国的に気温が平年を上回る日が続いている。気象の専門家によると、日本周辺の海水温が高いのが一番の原因だという。毎年、台風シーズンになると、海水温が下がる。台風の風の影響で、海の水がかき回されるからである。ところが今年は、海の表層だけでなく、深部まで例年より1度以上高くなっている。そのため、強い台風が通過しても、あまり表面の温度が下がらないという異常な現象が起きているようだ。

▼近年の猛暑は現場作業にも大きな影響を及ぼしている。業種別の熱中症による死傷者は、建設業が20%と最も多く、以下製造業19%、運送業14%、警備業11%と続く(2020~2024年:厚労省「職場における熱中症による死傷者数の推移」)。今年6月からは熱中症対策が義務化されたが、今年の夏は連日最高気温が35度以上の猛暑日が続くなど、個々の企業努力だけでは到底対応できないレベルになった。

▼全国建設業協会(全建)が行った「令和7年度労働環境の整備に関するアンケート」の結果によると、「推進して欲しい制度」のトップが「夏季高温作業中止期間(シーズンオフ制度)」だった。「要望・意見」でも「若年者の人材確保」(71%)に次いで、「気候条件による影響・対策・課題」(52.9%)が挙げられた。また、建設産業専門団体連合会(建専連)は今年7月に実施した国交省幹部との意見交換会で、8月休工の導入を求めた。

▼こうした要望を受け、国交省では来年から地方整備局発注の土木工事で、7~8月の期間に休工を試験的に導入することになった。来年の試行を経て、今後官公庁が発注する土木工事では夏季休工が進むものと予想される。一方、問題は民間の建築工事だ。夏季休工を実施すれば、当然工期は延びる。コストも増加する。なにより現場作業に携わる人全員が月給制でないと実施は難しい。職種、地域によっては日給月給の職人も多い。

▼高いハードルはあるが、現場で働く人の健康、安全への配慮は何よりも優先しないといけない。夏季休工が無理なら、業界独自の「サマータイム」を設定してはどうか。現場の仕事は早朝から正午までにすれば熱中症のリスクは減る。可能なら夜間工事も検討すべきだろう。「新3K」(給料が良い、休暇が取れる、希望が持てる)を実現し、若者に真に魅力のある職場にするには夏の暑さ対策は避けて通れない。業界全体の対応が急がれる。(合田)

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