塗料塗装・最新動向セミナー

東京塗料会館のセミナー会場

 製販装3団体の共催による「2024年度塗料塗装・最新動向セミナー」が8月22日、東京塗料会館会場とウェブ配信によるハイブリッド方式で開かれた。今回は児島與志夫日本塗料工業会専務理事が「日本と世界の塗料需要動向」、澤野英樹日本塗料商業組合専務理事が「塗料販売業の現況と今後の市場展開について」、村木克彦日本塗装工業会専務理事が「建築塗装の現状と今後の取り組み」と題して講演した。各講演の要旨は次の通り。

日塗工 建築塗料の需要増を期待 海外はインド中心に拡大へ

 2023年度の塗料の生産数量は145万トン、販売数量は150万トン、販売金額は7321億円。原材料価格高騰分の価格転嫁が行われたことから、販売金額は前年度比3・3%増となったが、生産数量は同1・2%減、販売数量は同2・0%減となった。塗料業界ではコロナ禍以降も市場の回復が見られない。

 原材料価格は21年以降、円安傾向にあるため資源輸入価格が上昇。22年秋以降にようやく下がり始めた。塗料の国内企業物価指数は、化学製品価格の上昇から少し遅れて上昇。価格転嫁もその分遅れ、23年に入って化学製品の指数に追いついた。価格転嫁を実施しているにもかかわらず、原材料費率の上昇がみられることにより、原材料価格の高騰分を製品価格の転嫁で吸収されていないことが分かる。

 建築塗料分野は、資材価格の高騰や職人不足の要因もあり、22年度は前年度比マイナスの結果となったが、23年度から24年度にかけては個人消費の回復も見込まれ、需要増に向かうものと期待される。

 自動車新車用塗料分野は、半導体不足の影響から脱し、国内生産活動は上向いており23年度実績は10%以上の伸びが見込まれる。

 工業用塗料分野は水性塗料が19年度を底に21年度は大きく伸長し、22年度は微減となるも高水準を維持した。

 家庭用塗料はコロナ禍による巣ごもり需要と言われた21年度から一転し、22年度は反動減。23年以降は、物価高・円安の影響でホームセンター関連の不況も長引く傾向で、厳しい状況が継続する予想。

 22年度の塗料会社の規模は従業員数50人以下が40社(構成比39・6%)、50~100人以下が15社(14・9%)、100~300人以下が27社(26・7%)、300人超が19社(18・8%)。売上高は従業員数100人以上の企業は増加傾向にあるが、50~100人の企業は減少、50人以下は横ばいとなっている

 塗料事業に関わるCO2排出量はおよそ20万トン、原料由来CO2排出量はおよそ200万トンと推定される。塗料から排出されるVOC総量は2000年度に53・5万トンだったが、2022年度は20・8万トンで、60%削減できた。ただ、VOC排出量総量に占める割合は38%から37%へ1ポイント減ったが、塗料が最大のVOC排出源である状況は変わらない。

 遮熱塗料については最近の出荷量は停滞気味である。遮熱塗料による塗装は、令和6年度既存建築物省エネ化推進事業の補助対象に加えられたことから、今後の需要増が期待される。

 2023年の世界の塗料市場はアジア圏の伸びが大きく、地域別比率も出荷数量は57・4%、出荷金額は45・1%を占めている。アジアの中でもインドを中心にした南アジアの需要増は著しく、今後も成長・拡大が期待される。

日塗商 塗料マイスター制度が発足 社員研修として高い評価

 令和6年4月現在の日本塗料商業組合の組合員数は1209社で、前年から41社減少した。1992年のピーク時に比べると49%に減った。ここ数年は倒産や廃業、合併による脱退が増えている。塗料卸売業者数(印刷インキ、メーカー営業所などを含む)全体では2014年から増加に転じているが、日塗商の組合員数は減少を続けている。

 青年部の60社を対象にしたアンケートによると、各社の配送スタイルは「自社ドライバーのみ」が48社、「自社+委託ドライバー」が11社、「メーカー直送便」が32社だった。「共同配送」の可能性については、可能と不可能が拮抗する結果となり、エリアや業種による違いもあるように思われる。

 このほどスタートした「塗料マイスター制度」は塗料販売店の社員を育てる人材育成プログラムと位置付けており、教材と検定を用意している。スタンダード、アドバンス、塗料マイスターの3段階を設定しており、令和5年度は第一段階として第1回スタンダード検定をオンラインで実施した。全国から約1200人が受験し、教材のハンドブックも約2700部の申し込みがあった。今回の検定の合格率は90%を超えたが、第2回以降はもう少し下がる試験方法を検討していくことになる。

 第1回検定実施後の組合員のアンケートによると、「期待通り」「期待以上」が90%で、高い評価を得た。

 活用方法については、「社員研修として活用する」が最も多く、次いで「対外信用の向上」「社員のモチベーションアップ」の順となった。

 今年度の展開では、第2回スタンダード検定をブラッシュアップして実施する。改訂要綱の発表、ハンドブック第2版の増刷、検定問題の追加作成も行う。

 さらに、広報・ブランディングのため、のぼり、バッジの作成・販売、名刺記載ルールの設定を行う。また、合格者の活用例の紹介や、一般・関係団体への認知活動、建材・住設EXPOへの製販装3団体共同出展も計画している。

 アドバンス検定に向けた準備も進め、ハンドブック(中級レベル)の作成検討や調査を行う。

 情報委員会が進めている「塗料ナビ」は、6月末よりプロトタイプを日塗商ホームページの組合員向けサイトで公開している。近く、生成AI体験セミナーも開催し、裾野の拡大を図る。製品検索とAI検索の統合により、検索結果をAIが要約して回答するが、回答精度については評価フォーラムを立ち上げるなどして随時、改善を加えていく。

日塗装 外国人材の受け入れを支援 JACの教育訓練にも参画

 日塗装における令和5年の完成工事高は9500億円で、対前年比6・8%(600億円)増加し、このうち改修は85%で、前年より1・5ポイント増えている。

 官民別では官庁工事が15%、民間工事が85%だが、民間工事は近年やや減少傾向にある。民間工事では元請が43%、下請が57%となった。構成別では建築塗装が47%と減少傾向にある。その他は防水9%、橋梁塗装11%、タンク・プラント5%。

 技能者数を年齢別で見ると、日塗装では65歳以上の技能者が8・7%で、建設業全体の約16%と比較して高齢化度合いは小さいと言える。男女別では、女性の割合が4・6%で前年度から0・1%ポイント増加した。このうち20~29歳の増加率が最も多かった。

 日塗装会員が受け入れる外国人技能実習生は、令和5年度には新型コロナの影響も減り1194人と大きく増加した。技能実習制度の廃止により、昨年から特定技能制度への移行が進んでいる。また、技能実習制度の見直しが検討され、今年6月には技能実習に代わる新たな制度「育成就労制度」が創設された。今後は技能実習生を育てる国際貢献から労働力である人材育成と確保を目指す。

 今年6月、「担い手3法」が一体的に改正された。技能者に賃金が行き渡ることが最も重要で、特に民間工事が課題になっている。本会でも国交省との意見交換会などを通じ、実現に向けて取り組んでいく。

 日塗装における令和5年度9月時点の建設キャリアアップシステムの登録者数は8434人で会員全体の55%にまで増加した。レベル別の内訳は、レベル1=6104人、レベル2=488人、レベル3=374人、レベル4=1468人となった。

 2019年から導入された特定技能外国人制度は、従来の技能実習制度ではなく、即戦力の労働力として外国人技能者を受け入れる制度である。

 特定技能1号の受け入れには2つのルートがあるが、無試験で移行できる技能実習制度(2号修了者)からの移行が主流になっている。

 特定技能外国人を受け入れる事業者は建設技能人材機構(JAC)に加入する必要がある。ただし、日塗装などの団体が加入すれば、会員企業は個別に加入する必要がない。

 2022年から建設業の職種が3つの区分に統合され、塗装は土木または建築のいずれかで受け入れが可能になった。

 本会は2022年10月からJACに加入しており、会員企業は間接的会員に位置づけられている。現在、受け入れを希望する会員に向け、会員証明書を適宜発行している。

 6月末現在で、会員証明書を発行したのは127社あり、うち特定技能1号の認定を受けたのは、69社112人である。

 また、新たな取り組みとして、JACの教育訓練事業の一つとして実施しているインドネシア合同説明会にも参画した。本会役員2人が参加し、塗装に関する動画に中心に紹介した。

 このほか日塗装事業としては▽住宅リフォーム事業者団体登録制度▽リフォームアワード▽女性活躍推進への対応(女性会員および後継者との意見交換会、けんせつ女子ビューティーセミナー)▽ペインテナンスキャンペーンとデザイン画コンテスト▽安全環境に関する周知活動(石綿、化学物質の規制強化に関する対応、デコ活宣言)▽全国建築塗装技能競技大会の開催―などを推進している。

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