だめひろい 遮熱塗料の世界市場は大幅成長へ 「住宅省エネキャンペーン」の適用を

▼米CNNの報道によると、トランプ大統領の提案により、南部国境沿いの壁を黒く塗ることになった。「現地の高温の中では、黒く塗った物は一段と熱を帯び、登るのがさらに困難になる」というのが主な理由という。メキシコ側からの移民の流入を阻止する手段の一つのようだ。ただ、お世辞にも良いアイデアとは思えない。「夏場の、それも昼間しか効果がないのでは」と大統領に言える人は政権にいないのだろう。

▼米国境の壁とは逆の効果を期待できるのが遮熱塗料だ。日本塗料工業会のまとめによると、2024年度の遮熱塗料の出荷量は約1万5千トンで、前の年度より5%伸びた。ただ、近年は1万4千トン程度に停滞している。期待された道路用遮熱塗料も伸び悩んでいるようだ。それでもコロナ禍以降、建築用塗料の出荷が減少傾向にあり、遮熱塗料が占める割合は毎年増え、建築用塗料全体の約5%に達している。

▼一方、世界的にみると、遮熱塗料への関心は高い。持続可能な取り組みへの意識の高まりと、省エネルギーの必要性を背景に、遮熱塗料の市場は大幅な成長が見込まれている。コンサルティング会社、Verified Market Reportsによると、遮熱塗料の市場規模は2024年に12億米ドルとみている。さらに、2033年までには25億米ドルに達し、2026年から2033年にかけての年平均成長率は9・2%と予測する。

▼米環境保護庁(EPA)が実施した調査では、遮熱塗料によって最大15%のエネルギー節約が可能であることが確認され、遮熱塗料がもたらす具体的なメリットが示された。関連各メーカーでは、より効果的な配合を開発するための研究開発に投資しており、その結果、住宅部門と商業部門の両方を対象とした革新的な製品を市場に投入する新規参入企業が続々と現れている。

▼世界的な温暖化とヒートアイランド現象で、毎年繰り返される猛暑への対策が喫緊の課題になっている。遮熱塗料は最も手軽にできる効果的な暑さ対策であり、日本でも一層の普及が望まれる。国交省、経産省、環境省の3省は「住宅省エネキャンペーン」として、住宅の省エネリフォームなどを支援している。ただ、助成金の対象は高断熱窓、高効率給湯器、断熱改修のみで、遮熱塗料には適用されない。省エネ対策で世界的な競争が始まっている中、これでは日本が後れを取るのではないか。遮熱塗料も利用できるよう、業界として働きかけを強化する必要がある。また、消費者の認知度を上げるため、一層のPRに努めることも大事だ。(合田)

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